すべての物語は食から始まるPart15
競馬中毒者の祭典初の連載企画である『すべての物語は食からはじまる』シリーズの1本目はこちら!
記念すべき最後の題材は敷料類です。
なんと最後の最後にして食料ではないという変化球でございます(笑)
敷料とは文字のまま、厩舎の地面に敷くための藁やチップのことです。
しかし、あまり気にされないのにレース結果をも大きく左右してしまう、とても重要なものなのです。
JRAFファシリティーズ株式会社では現在、以下の商品が販売されています。
~敷き藁~
●稲わら
押し切り不要のハーフカットタイプが一般的に使用されています。
長さが約50cmほどにカットされているのでそのまま使用可能です。敷き藁ですが、馬がよく食べるので餌をあまり食べなくなってしまう場合がある。
国産が一般的ですが、近年安価な中国産が多く入ってきています。
●麦わら
稲わらと比較するとあまり食べない利点がある。
麦わらはオーストラリア産が一般的に流通しています。
●ウッドチップ
木材を薄く削った敷料になります。馬があまり食べないことと、清掃などの作業がしやすいので非常に便利です。
ただ、人間と同じで木材の種類によってはアレルギー症状が出てしまう可能性が少ないながらもある。
敷料とは足腰の負担軽減などの物理的環境・リラックスなどの精神的環境の提供だけではなく、糞尿を吸収して取り替えることによって厩舎内を清潔に保ち、病気の発生を予防するための重要な役割をもっています。
また、敷料とはいえ自然のものを使用しているので、口に含んで食べることがあります。そのため、敷料を育てる際に使用した薬剤の残渣・競走馬への投薬剤がこぼれるなどにより予期せぬ形で影響を及ぼすことがあります。
~敷き藁がレース結果に影響!?~
過去に有名な話だと、2006年10月1日に行われた凱旋門賞で3着となったディープインパクトから、レース後の検査でイプラトロピウム(咳どめ)が検出され失格処分となる事象がありました。
同年の9月21日~9月25日までにディープインパクトに対して咳止めの吸入治療が行われました。
その際、ディープインパクトが暴れて馬房内に飛散したイプラトロピウムが敷料に付着してしまった。
しかし、薬剤が飛散したことに気が付かずに敷料を取り替えないまま競走前日から当日の間に、ディープインパクトが汚染された敷料を摂取してしまった。
それにより、尿検体が陽性となった可能性があるとされています。
※フランスギャロ広報より以下の発表がされました
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フランスギャロ広報発表[全訳]
2006年11月16日(木)
2006年11月15日、フランスギャロ審査委員会は、10月1日にロンシャン競馬場で行われた凱旋門賞で3着となったディープインパクトの事案を審査しました。レース後に採取した同馬の検体を分析した結果イプラトロピウムが検出されました。これは同馬を治療するための一連の処置において使用されたものでした。
フランスギャロ審査委員会は3着入着したディープインパクトを失格とすることとしました。
これによって同競走の着順は次のとおりとなります。
1着レイルリンク、2着プライド、3着ハリケーンラン、4着ベストネーム、5着アイリッシュウエルズ、6着シックスティーズアイコン、7着シロッコ
池江泰郎調教師に対しては、管理馬を保護するための十分な措置をとらなかったこと、および明らかとなった規律違反を回避するための十分な措置をとらなかったことにより、最高額の15,000ユーロの制裁金を科しました。
アンリ・プレ
フランスギャロ審判部長
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※JRA公式サイト JRAニュースより引用
ディープインパクトの件では池江泰郎調教師の調教師としての規律違反・注意不足があったものと判断されたが、予期せぬ形での失格には誰もがガックリ来たことだと思います。
しかし、一見食とは関係ないようなことでも競走馬の活躍の機会を奪いかねないこともあるんですね。ディープインパクトの件から、敷料の残渣薬剤の検査などより一層厳しくなったことは言うまでもありません。
今回で『すべての物語は食から始まる』シリーズ完結となりました。
牧草類からサプリメント・敷料類まで15回に渡り、幅広くお伝えしてまいりましたがいかがだったでしょうか?
当初の予定だとここまで長くなることを予期していませんでしたが、書き進めるうちにどんどん膨らんでしまいました。
私たち人間同様、競走馬も体づくりの一環である食事は非常に大切ですね。
それでは、明日も美味しいものを食べて、大金夢見て頑張りましょう!!
気が向いたら番外編やるかもよ(笑)
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